【箱根温泉旅館協同組合へ改組】

 戦後の混乱期から脱出し、業界全体に落ち付きが見え始めた昭和二十五年民主化の世相を反映して業界の活発な動きや世代の交代もあり、従来の旅館経営から自由闊達な発想と思い切った構想が生まれるようになった。政府も交通機関の整備に力を注ぎ、国内輸送力の増強につとめたので観光産業は急速な発展をみた。
 こうした時代背景の中で昭和二十五年二月二十二日、塔之沢環翠楼において臨時総会が開催され、商業協同組合を改組して、中小企業協同組合法に基づく「箱根温泉旅館協同組合」が設立され、定款の外「福利厚生施設に関する規約」及び「役員に関する規約」が新たに定められた。また、木賀地区からの発言で一名、さらに湯本から二名、計三名の理事が増員された。
 組合員の数は湯本三二、温泉二二、宮城野三一、仙石原六、元箱根九、箱根二、芦ノ湯二の計一〇四人で、昭和二十二年以降二三人が新たに加入している。

   箱根温泉旅館協同組合定款
    第一章 総則
 第一条   当組合は組合員が相互扶助の精神に基いて協同して事業を行うために設立されたものであ
       る。
 第二条   当組合は箱根温泉旅館協同組合と称する。
 第三条   当組合は左の業務を営むを以て目的とする。
    一、生産、加工、販売、購買、保管、運送、検査その他組合員の事業に関する共同施設
    二、組合員に対する事業資金の貸付及び組合員のためにするその借入
    三、組合員の福利厚生に関する施設
    四、組合員の事業に関する経営及び技術の改善向上又は組合事業に関する知識の普及を図るため
      の教育及び情報の提供に関する施設
    五、組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結
    六、前各号に附帯する事業
 第四条   当組合の事務所を神奈川県足柄下郡湯本町塔之沢一〇九番地に置く。
 第五条   当組合の地区を神奈川県足柄下郡湯本町、温泉村、宮城野村、仙石原村、芦の湯村、元箱
       根村及び箱根町一円とする。
 第六条   当組合の公告は当組合事務所の掲示場に掲載する。
    第二章 組合員
 第七条   当組合の組合員となるためには左の要件を備えなければならない。
    一、組合の地区内において旅館業を営む者
    二、組合員は出資一口以上を有しなければならない
 第八条   前条に掲げる資格を有する者は当組合の承認を受けて組合に加入することができる。
       当組合は加入の申込があったときは予め総会で定めた方法によってその諾否を決する。
 第九条   当組合に加入しようとする者が前条の承諾を受けたときは遅滞なく引受けようとする出資
       口数に応じ他の組合員の払込済出資金額と同額の払込をしなければならない。
       加入は加入しようとする者が前項の規定による払込をしたときに効力を生ずる。
 第十条   組合員は左の事由によって脱退する。
    一、組合員たる資格の喪失
    二、死亡又は解散
    三、除名
    四、公正取引委員会の審決
 第十一条  組合員の死亡によって相続人中組合員となる資格を有する者は相続開始後三十日以内に加
       入の申出をしたときは第八条の規定にかかわらず相続開始の日に遡り組合員となる。
 第十二条  組合員は第十条の規定にかかわらず九十日前までに予告して事業年度の終りにおいて脱退
       することができる。
       脱退の申出は其の理由を記載した書面でしなければならない。
 第十三条  組合員が左の各号の一に該当するときは総会の決議によって除名することができる。
    一、出資の払込経費の支払その他組合に対する義務を怠った組合員
    二、長期間にわたって組合の施設を利用しない組合員及び不正に利用したとき
    三、当組合の事業を妨げ又は妨げようとする行為があったとき
    四、犯罪其の他信用を失う行為があったとき
 第十四条  組合員が脱退したときは其の年度の終りにおける組合の財産によって其の持分の全額を払
       戻すものとする。
       但し除名による場合はその半額とする。
       当組合の財産を以て当組合の債務を完済することができないときは脱退した組合員はその
       出資口数に応じて払込出資金額を限度として損失額の払込をしなければならない。
 第十五条  脱退した組合員が組合に対する債務を完済するまでは組合は持分の払戻を停止する。
 第十六条  当組合は組合の事業を行うため総会の決議によって組合員に必要な経費を賦課することが
       できる。
 第十七条  当組合は組合の行う事業について組合員の利用分量に応じて使用料及び手数料を徴収する
       ことができる。
    第三章 出資及持分
 第十八条  出資一口の金額は金五百円とする。出資金は創立総会終了後一ヶ月以内にその金額を金銭
       を以て払込むものとする。
 第十九条  一組合員の出資口数は出資総口数の百分の二十五を最高限度とする。
 第二十条  組合員は其持分を組合員以外の者に譲渡することはできない。
       組合員の持分を組合員相互間に譲渡するには加入の例によらなければならない。
       持分の譲受人は其持分について譲渡人の権利義務を承継するものとする。
       組合員は其持分を共有することはできない。
    第四章 総会
 第二十一条 総会は通常総会と臨時総会とする。
       通常総会は毎決算終了後二ヶ月以内に理事長が招集する。
       臨時総会は必要に応じて招集する。
 第二十二条 総会を招集するには開催日から拾日前迄に会議の目的たる事項を示し各組合員に書面で通
       知を出さなければならない。
       但し総組合員の同意があれば招集の手続きを経ないでも開くことができる。
 第二十三条 組合員が総組合員の五分の一以上の同意を得て会議の目的たる事項及び招集の理由を記載
       した書面を理事長に提出して総会の招集を請求したるときは理事長は其の請求のあった日
       から二十日以内に臨時総会を招集しなければならない。
 第二十四条 総会は定款で別に定めた場合の外左記の事項を議決する。
    一、定款の変更
    二、規約の設定変更又は廃止
    三、毎事業年度の事業計画の設定又は変更
    四、経費の賦課及び徴収の方法
 第二十五条 組合の議事は法律に特別の定めのある場合を除いて出席者の議決権の過半數で決し可否同
       数のときは議長の決するところによる。
 第二十六条 総会の議長は総会において互選する。議長は組合員として組合の議決に加わることはでき
       ない。
 第二十七条 組合員は各々一個の議決権を有する。
       組合員は第二十二条により予め通知のあった事項につき書面又は代理人を以て議決権を行
       うことができる。この場合はその組合員の親族若くは使用人又は他の組合員でなければ代
       理人となることができない。
       代理人は二名以上の組合員を代理することはできない。代理人は代理権を証する書面を組
       合に差し出さなければならない。
 第二十八条 組合で決議した事項は議事録に記載し議長と出席した理事監事が之に署名して組合に保存
       する。
    第五章 役員顧問及び監事
 第二十九条 組合に役員として理事二名以上、監事一名以上を置く。
 第三十条  役員は総会において組合員のうちから選挙する。
       但し設立当時の役員は総会において組合員になろうとする者又は組合員になろうとする法
       人の業を執行する役員のうちから選挙する。
       役員の選挙は無記名投票によって行う。投票は一人につき一票とする。
 第三十一条 理事の任期は三年、監事の任期は三年とする。
       設立当時の役員の任期は前項の規定にかかわらず創立総会に於て定める期間とする。
       但しその期間は一年を超えてはならない。
 第三十二条 監事は理事又は組合の使用人と兼ねてはならない。
 第三十三条 組合員は総組合員の五分の一以上の連署をもって役員の改選を請求することができる。そ
       の請求につき総会において出席者の過半数の同意があったときはその請求に係る役員はそ
       の職を失う。
 第三十四条 組合は理事の過半数の決議により学識経験のある者を顧問として常時組合の重要事項に関
       し助言を求めることができる。
       但し顧問は組合を代表することはできない。
 第三十五条 組合は理事の過半数により監事及会計主任を選任しその主たる事務所又は従たる事務所か
       においてその業務を行わせることがせきる。
 第三十六条 理事は理事会を組織する。
       理事は理事長一名、常務理事若干名を互選する。
       理事長は当組合を代表し組合の業務を総理する。
       常務理事は理事長を補佐して当組合の常務を執行し理事長が事故あるときはその職務を代
       行する。
       監事は当組合の業務及財産の状況を監査する。
       理事会は必要に応じ理事長が招集する。
       理事会の議長には理事長が当る理事会の議決は理事の過半数で行う。
 第三十七条 理事会はこの定款に別に定める場合の外左に掲げる事項を議決する。
    一、総会に提出する議案
    二、其の他理事が必要と認める事項
    第六章 会計
 第三十八章 本組合の事業年度は一ヶ年とし毎年四月一日に初まり翌年三月三十一日に終るものとす
       る。
       但し第一期に限り三月一日に初まり翌年三月三十一日に終る。
 第三十九章 理事は毎年度の終りにおいて左に掲げる書類を調整し通常総会の前日より一週間前にこれ
       を監事に提出し且つ主たる事務所に備へなければならない。
    一、財産目録
    二、貸借対照表
    三、事業報告書
    四、損益計算書
    五、損益金処分案
 第四十条  監事は前条に掲げる書類を受理したるときは遅滞なくこれを監査し意見書を添えて理事に
       送付しなければならない。
       理事は監事の意見書を添えて前項の書類を通常総会に提出してその承認を求めなければな
       らない。
 第四十一条 組合は損失の補塡に充てるため出資総額の二分の一に相当する金額に達するまで毎事業年
       度の利益金の十分の一以上を準備金として積立てるものとする。
 第四十二条 毎事業年度における総益金から総損金及繰越損益金を加減したるものを剰余金として前条
       による積立金を控除して残余があるときはこれを組合員に配当し又は次年度に繰越すもの
       とする。
       剰余金の配当は事業年度末における組合員の払込済出資金に応じて年六分以内で行う。
       損失の処理は総会の決議に従うものとす。
 第四十三条 組合は組合員が出資の払込を終るまでその組合員に配当する剰余金をその払込に充てるも
       のとす。
       附則
 第四十四条 本定款に記載なき事項は法令の定むるところによる。
 第四十五条 組合の負担に帰すべき設立費用は   円以内とする。
 第四十六条 定款で定める事項を除いて総会の決議により規約を定めることができる。

   福利厚生に関する規約
 第一条   組合員の福利厚生施設として組合員の左記災害を共済する。
    一、組合員の営業施設に対する風水による被害
    二、組合員の営業施設に対する火災
 第二条   第一条の共済資金として組合員は毎年一口金   円也の共済積立金を拠出する。
       但し、一組合員の積立金の口数は   口を限度とす。
 第三条 第一条の共済の程度を左記の通り定む。
    一、災害に対しては其の組合員の被害の時に於ける積立金現在高の五十倍を限度とし其の組合員
      営業施設全部に対する被害の割合により救済金を支給する。
    二、第一条の共済金の支給を受けたる組合員は其の組合員が其の時迄に積立てたる積立金は零と
      なる。
      但し、其の時の積立金が支給金を超過する時は其の超過残額は次の積立金となる。
 第四条  当組合共済事業の一部として火災保険契約の代理扱いを行い、適当なる火災保険会社へ保険
      契約を斡旋する。
 第五条  此の規約による救済の円満なる遂行を謀る為め福利厚生委員会を置く。
      此の委員会は委員五人以上とし内一人を委員長とする。
      委員は総会により選任する。
      委員長は委員の互選による。
      委員の任期は三年とす。
      委員を以て委員会を構成し委員長は委員会を代表し委員会の議長となる。
      委員会の議事は出席委員の過半数を以て決する。
 第六条  委員会は火災保険契約の締結の必要如何及組合員の災害の程度を調査し、救済支給金額案を
      定め当組合理事長に報告する。
      理事長は前項の報告を受けたる時は速に理事会に諮り委員会の提出したる救済金額の諾否又
      は修正金額を決定する。

   役員に関する規約
 第一条  当組合の理事の選任を左記の通りに定む。
      湯本町七名、温泉村四名、宮城野村五名、仙石原村一名、元箱根村一名、箱根町一名、芦の
      湯村一名 計二〇名
      学識経験ある者一名を選任することができる。
 第二条  理事の選挙は各地区別に総会に出席したる其の地区の出席組合員により選挙を行い総会の承
      認を求め選任す。但し学識経験ある者より一名の選出は理事会の推薦により総会の承認を求
      むる。
 第三条  当組合の監事は三名とする。

 新組織となった組合は、新しい時代の流れにそい、組合事業に取り組み始めた。また旅館経営もようやく軌道に乗り始め、経営利潤も生まれるようになった。

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※本文書は昭和61年発行の『箱根温泉史』記載事項です。現在の事実とは異なる部分があります。

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