【放熱量】

 温泉地帯の地熱活動と、例えば石油エネルギーとの比較をするには、その熱エネルギー放出熱があると都合が良い。火山性水蒸気を噴出している箱根、登別、草津などの地域では、噴気活動による熱エネルギーは温泉量に加算されていないので、温泉量だけで地熱活動の大小を比較することは十分でない。このような立場からの全国的な統計資料はまだないが、主要温泉地については放熱量の調査があり、その泉温の単純平均温度五九度である(日機連 一九八二)。主要でない温泉地の泉温はより低いので、日本の温泉の平均温度を五〇度とみなすことにする。日本の地下水の平均温度を一四度と見積もると、日本の年間温泉放熱量は九億七〇〇〇万メートル×(五〇-一四)、つまり三四兆九二〇〇億キロカロリー/年となる。

 さて、これを石油(一万キロカロリー/キログラム)に換算すると、三四億九二〇〇万トン、一〇万トンタンカー三五隻分の石油に相当する熱エネルギーが温泉として毎年全国から湧出しているわけである。石油一バレル(〇・一三七トン)三〇ドルが現在の国際価値であるので、今求めた石油の金額は七億六〇〇〇万ドル、一ドルを二〇〇円とすると、これは約一五四〇億円になる。

 同様な計算を箱根温泉について行うと、温泉熱だけで約三三億円、火山性蒸気による放熱量を加えると約四六億円になる。箱根の人口を約二万人とすると、一人当たり年二三万円の熱エネルギーが火山の恵みとして与えられていることになる。

 温泉地の熱的規模を見積るために福富は温泉地の熱階級区分を提唱している(一九六一)。別な言い方をすると熱的規模の番付ということになる。熱階級六クラスの温泉の内、別府、草津を横綱とすると、湯布院、指宿、箱根、伊東が大関、熱海、定山渓が関脇である(表5)。なお、この番付表の箱根の熱量は環境庁資料に記載されている温泉についてのみの計算値であり、火山性蒸気による放熱量は含まれていない。

 いろいろの立場から全国主要の温泉場番付をしてみたので、その中での箱根温泉の占める位置がかなりはっきりしてきた。箱根は雄大な火山、山頂の湖芦ノ湖、そこに映る富士の眺め、豊富な温泉など素晴しい自然に恵まれ、宿泊施設、交通網が良く整備され、利用客も多く、総合的に見て、日本の温泉の中で横綱に位する温泉場であるといえよう。

 表5 温泉熱量番付表(昭和55年)

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※本文書は昭和61年発行の『箱根温泉史』記載事項です。現在の事実とは異なる部分があります。

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