【箱根カルデラ深層地下水の水頭分布】

 昭和三十五年以来中央火口丘の標高八〇〇メートル以上の地点で五〇〇メートル級のボーリングが盛んに行われるようになった。標高の高い地点のボーリングでは、掘削深度が増すにつれて孔内水位がドンドン低下した。掘削者はこれを「井戸の底抜け」などと言っている。水井戸を掘るとき深くなり過ぎると、孔内水位も深くなり過ぎ、水中モーターポンプなど特別の揚水装置を要するので困っていた。掘削深度は深くなるのに応じた水位低下は、火山体での水の動きからみると、山の高いところでは雨水が地表から地中に浸透・流下していることの具体的な表現である。 

 ここで再び図11の断面図を見てみよう。ケーシング水止め工事が完全に行われている深い温泉ボーリング孔で、その孔内に現れた水位(水頭)をつらね深部地下水、つまり主要温泉帯水層の被圧水頭面を点線で示した。重要なことは、カルデラ内の水頭分布が西側を芦ノ湖水位七二三メートル、東側を早川の河床標高四〇〇メートルで決められ、水頭面はゆるやかに東に傾いている。この水頭分布勾配の「西高東低」は箱根カルデラ内で、温泉が西から東に流れていることを意味している。温泉の源になる雨水はカルデラの芦ノ湖側、富士の見える地帯や標高の高い山地から地下に浸透し、中央部で神山の火道から上昇してくる火山性高温流体によって加熱され、高温泉となり、富士の見えないところである早川の谷底に達して温泉をなって湧き出している。
 地中温度分布で東西が非対象になり、熱水の西から東への動きが暗示されていた。その動きはカルデラ内の主要温泉帯水頭分布によってより確かになっている。

図11 温度断面図(Oki and Hirano 1970)

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※本文書は昭和61年発行の『箱根温泉史』記載事項です。現在の事実とは異なる部分があります。

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