【温泉の飲用】

 温泉法は温泉の飲用、浴用を認め、国民の健康、福祉のために役立てることを目的としている。人体にとって重要なミネラルを多量に含む温泉を飲用することについて、基本的には反対する理由はなにもない。
しかし、神奈川県では現在温泉の飲用許可は一件も出されていない。温泉はもっぱら浴用のみに用いられている。昭和二十三年に温泉が施行された時、敗戦の混乱から立ち直ることができず、温泉地の衛生状態が不十分なために、温泉の飲用は公衆衛生上問題があり、飲用許可を認めなかったものと考えられる。その状況は三五年を経た今日大きく変化しているので、飲用について検討しなおす時期にきている。
 温泉を飲用しない現在の人々は温泉の成分について具体的なイメージを持っていない。化学分析の表については風呂場に掲示されているのを見て「分析表か、なーるほど。でも良くわからないね」といった状況であろう。江戸時代、七湯も枝折にあるように、口に含んだ人々は泉質を味として具体的にとらえていた。飲泉は現代の我々が考えなおす問題の一つであろう。

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※本文書は昭和61年発行の『箱根温泉史』記載事項です。現在の事実とは異なる部分があります。

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