【温泉利用】

 温泉法では温泉を公共の浴用又は飲用に用いるとき、温泉の成分、効用の適否について、見やすい場所に掲示しなければならない。療養泉の立場から、一七種ある箱根温泉の禁忌症・適応症について整理して見よう。

『一般的基準』
 温泉には一般的に、急性の病気、重い心臓病、腎臓病などの場合は入浴を控えねばならない。
 療養泉は一般的に次のような症状におおいに効果がある。神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔病、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進。

 右に述べたような効果は、日常の風呂に入浴する時、誰でもが経験によって認めていることである。なお、現在、箱根では飲用許可のある温泉は皆無であり、これは今後の課題である。

 『塩化物泉』
 禁忌症  一般的事項に加え、飲用の場合、腎臓病、高血圧症、その他むくみのあるもの(甲状腺機能高進症の時はヨウソを含む温泉は禁忌とする)。

 適応症  一般的事項に加え、浴用の場合、きりきず、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病、飲用の場合、慢性消化器病、慢性便秘

 
 箱根に産する塩化物泉は次のように細分されている。

  1 ナトリウム塩化物泉……湯本、大平台、堂ヶ島、宮之下、底倉、小涌谷、二ノ平、強羅、木賀
  2 ナトリウム・カルシウム塩化物泉……湯本、二ノ平、強羅、木賀
  3 ナトリウム塩化物硫酸塩泉……湯本、大平台、堂ヶ島、二ノ平
  4 ナトリウム・カルシウム塩化物硫酸塩泉……宮城野・強羅
  5 ナトリウム塩化物硫酸塩炭酸水素塩泉……小涌谷
  6 ナトリウム塩化物炭酸水素塩泉……二ノ平
  7 ナトリウム・カルシウム塩化物炭酸水素塩泉……木賀

 『炭酸水素塩泉』
 禁忌症  一般的事項に加え、飲用の場合、塩化物泉に準ずる。

 適応症  一般的事項に加え、浴用の場合、きりきず、やけど、慢性皮膚病。飲用の場合、慢性消化器病。糖尿病、痛風、肝臓病

 箱根でこのグループに属する泉質には次のものがある。

  8  カルシウム・ナトリウム炭酸水素塩塩化物泉……大涌谷
  9  カルシウム・ナトリウム炭酸水素塩硫酸塩泉……湖尻

 『硫酸塩泉』(鉄硫酸塩泉及びアルミニウム硫酸塩泉を除く)
 禁忌症  一般的事項に加え、飲用の場合、下痢の時飲用不適、ナトリウム硫酸塩泉は塩化物泉に準ずる。酸性泉、硫黄泉の性質をもつ場合は、皮膚、粘膜の過敏な人、特に光線過敏な人には不適。硫化水素型では高齢者の皮膚乾燥症には不適。

 適応症  一般的事項に加え、浴用の場合、動脈硬化症、きりきず、やけど、慢性皮膚病。飲用の場合、慢性胆嚢炎、胆石症、慢性便秘、肥満症、糖尿病、痛風

 箱根には次のような硫酸塩泉がある。

  10  ナトリウム・硫酸塩泉……二の平、強羅、姥子、芦之湯
  11  カルシウム・硫酸塩泉……強羅、仙石原、姥子、湖尻、芦之湯、大涌谷、早雲山
  12  含硫黄カルシウム・硫黄泉(硫化水素型)……芦之湯、大涌谷
  13  酸性含硫黄アルミニウム・硫酸塩泉(硫化水素型)……湯の花沢
  14  酸性含硫黄アルミニウム・鉄(Ⅱ)硫酸塩泉(硫化水素型)。含鉄泉は浴用で月経障害、飲用で貧血に効果がある……湯の花沢

 『硫黄泉』
 禁忌症  一般的事項に加え、飲用の場合、下痢の時飲用不適、皮膚、粘膜の過敏な人、特に光線過敏な人には不適。硫化水素型では高齢者の皮膚乾燥症には不適。

 適応症  一般的事項に加え、浴用の場合、慢性皮膚病、慢性婦人病、きりきず、糖尿病。硫化水素型は右記に加え高血圧、動脈硬化に効果がある。飲用の場合、糖尿病、痛風、便秘に良い。

  15  単純硫黄泉(硫化水素型)……芦之湯、仙石原

 『単純温泉』
 一般的禁忌症及び適応症の基準が適応される。単純温泉は次の二つに区分される。
  16  単純温泉……湯本、塔之沢、堂ヶ島、宮之下、底倉、小涌谷、二ノ平、強羅、木賀、仙石原、姥子、芦ノ湖、芦之湯
  17  アルカリ性単純温泉……湯本、塔之沢、大平台、宮城野、宮之下、小涌谷、二ノ平、強羅、木賀

                                      (大木靖衛)

カテゴリー: 7.温泉の効用   パーマリンク

※本文書は昭和61年発行の『箱根温泉史』記載事項です。現在の事実とは異なる部分があります。

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