【行政の対応】

 開発による自然破壊を眼のあたりにした新箱根町の幹部は、亀井一郎町長を中心に、自然保護を正面に打ち出した新町建設の計画を樹立した。昭和三十九年(一九六四)三月の「観光を主体とした総合計画」――緑とともに――には次のようにのべられている。まず姿勢として、
   当町においても、他の既開発観光地域の例にもれず、急速な発展を喜ぶ裏には、俗化損壊のおそれ
  を感じさせる暗い影のあることを見逃すことはできない。
   今日このような当町の開発に秩序と計画性を与えず、利用の適性化を誤るならば悔を千載に残すこ
  とになるので、諸般の障害を意識しながらもあえて土地利用の適正化を基礎とする自然保護重点の施
  策を講じようとした次第である。
 次に自然的資源の保護対策として、

 (1) 箱根の景観を構成する山岳、丘陵、湖沼を保護するため、地形の改修及び構築物の建設は慎重に
    行なう。
 (2) 特に箱根を代表する風景地を破壊するような開発は強く規制してその保全を図る。
 (3) 名所地を選定して保護区域を設け、改修を禁止するように図る。
 (4) 貴重な植物群落及び箱根の特産的植物は、その保護地帯を指定して自然そのままの形で保護する
    ように図るとともに、植物園等にも集めて保護する。
 (5) 温泉は乱掘による枯渇を防ぐため、専門的研究を行い指導する……略……。

 また開発の基本方針に「観光都市育成を図るため都市計画を強力に推進する」と打ち出された。このような保護と開発の調和を求める行政の努力と工夫が観光産業の資産の緑を永く残すために果した役割は大きかった。

カテゴリー: 5.開発と保護の調和を求めて   パーマリンク

※本文書は昭和61年発行の『箱根温泉史』記載事項です。現在の事実とは異なる部分があります。

コメントは受け付けていません。