【文化財保護の立場より】

 箱根町は、昭和三十四年(一九五九)文化財保護委員会を創設、町内所在の文化財保護に取り組みはじめたが、特に貴重な動植物が開発のため絶滅するのを防ぐため町指定天然記念物として保護することとなった。

 (1) タヌキモ 箱根カントリーゴルフコース内の小池に残存する食虫植物 昭和三十八年指定
 (2) ヒメハルゼミ 湯本早雲寺裏山のスダジイ林に、勤行蝉の異名を持つ暖地性のセミの生息を歌
    人並木秋人氏が注目、沢田秀三郎氏が確認、昭和四十年指定した。
 (3) ハコネサンショウウオ 安永五年(一七七六)来日したスエーデン人ツンベルグが箱根越えの
    折須雲川で採集し、珍しい両生類として世界に紹介した。バイパス工事で産卵地と生育地が分
    断され、また川の汚染で絶滅のおそれがあり、昭和四十四年保護のため指定した。
 (4) ハコネコメツツジ 富士火山帯各地の山頂付近岩場に自生する一属一種の小型のツツジ、箱根
    産の標本を基として種名が決められた。折からの盆栽ブームの犠牲となって盗掘されるものが
    多く、放置しておくと絶滅のおそれもあったため町では昭和四十六年天然記念物に指定し採取
    を禁じた。

 町の姿勢や住民の保護運動の高まりに神奈川県も積極的に対応した。昭和九年、文部省指定の天然記念物「仙石原湿原植物群落」が開発による周囲の環境の変化のため衰運が顕著となってきたため、指定地周辺の広い環境から保護することが必要であるとして周辺の公有地化を図った。昭和四十二年から四十五年にかけて一一五、八二四平方メートルを折から新設されて間もない環境庁の補助を受けて買収するとともに、戦時中開墾した大原水田の排水路を埋めて大原地区の湿原の水位回復を図った。
 またハコネコメツツジの最大の群落のある下二子山の中腹以上を買収し保護柵を巡らして立入りを禁止するとともに昭和四十八年県の天然記念物「箱根二子山の風衝低木植物群落」として指定保護することとした。その他、箱根神社裏のヒメシャラ純林(昭和二十八年)、早雲寺裏の暖帯性広葉樹林(昭和五十三年)等もそれぞれ県指定天然記念物として保護している。

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※本文書は昭和61年発行の『箱根温泉史』記載事項です。現在の事実とは異なる部分があります。

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