【箱根を守る会の設立と活動】

 祖先から受け継いだ美しい郷土箱根を、開発に伴う破壊から守り子孫に伝えることは今の世代の義務であると考え、昭和四十一年(一九六六)、箱根を愛する人たちによって「箱根を守る会」が組織された。次のような趣意書を全町民に配布、呼びかけをした。

  箱根は美しい山水の中に、古い歴史と豊かな動植物を秘めています。箱根の今日の名声と栄誉とは、
 すべてこれに負うとしても過言ではありません。しかし箱根は面積も比較的狭く、その上開発は殊に
 著しく進んでいます。箱根の輝かしい未来をつくるためには、相反したこの二つの特殊な現実を調和
 させ、普遍的な既成観念にとらわれずに、箱根に即応した最も箱根的な保全の施策を検討すべきとき
 であることを痛感いたします。
  基礎的な資料を集積してこれに備え、正しい世論の支持を得てこの目的に微力をつくしたいと考え、
 今回「箱根を守る会」の設立を企画いたしました。
   箱根にゆかりを持ち、また箱根に愛着を寄せられる方々のご賛同を得て、箱根をさらに美しく尊く
 したいと念願しております。

 会の目的や事業として、
箱根を守る会会則には次のようにうたっている。

  第3条 本会は箱根の文化遺産、自然景観及び動植物の保護育成を目的とする。
  第4条 本会は上記目的を達成するため次の事業を行う。
  (一) 文化遺産の調査と保存対策
  (二) 箱根の自然についての調査研究及び保護育成対策
  (三) 文化財保存と自然保護の重要性についての広報活動
  (四) 会報及び調査研究結果などの配布
  (五) 関係団体との連絡提携
  (六) 必要に応じ関係官庁、公共団体などに対する陳情、建議意見書の提出
  (七) その他本会の目的達成に必要な事業

 これに対し、湯本地区 五〇名、温泉地区 七一名、宮城野地区 五二名、仙石原地区
一〇九名、箱根地区 一六二名、町外 六六名、合計 五一〇名、のように多数の方々が
入会された。
 箱根の現状を憂える多くの人たちに支持されて会は発足し活動を始めたが、年ごとに次々と波のように押し寄せる保護上の問題に、どのように取り組んできたか主な事業を列挙すれば次のとおりである。

昭和四十一年
6月4日  設立総会
8月1日  会報「はこね」創刊(以後毎年発行)
8月    芦ノ湖調査に協力(以後毎年)
8月25日 仙石原湿原植物群落周辺の公有地化を大蔵大臣に陳情
8月25日 神奈川県企業庁寮移転方陳情
9月7日  神奈川県自然保護協会加入
12月1日 小塚山開発規制を厚生大臣及び国立公園局長に陳情

昭和四十二年
12月   動植物岩石採取禁止区域の標識五〇本を設置

昭和四十三年
2月24日 杉並木陸橋、畑引山国際会議場計画の問題点検討
2月25日 芦ノ湖にカモをたずねる会(以後毎年実施)
9月30日 箱根三国山、山伏峠西側斜面の鳥獣保護区設定に関する要望書を林野庁長官、静岡県知事、
     神奈川県知事、日本鳥類保護連盟、猟友会に提出
11月   芦ノ湖のカモ類保護のためドングリ集荷、餌台設置に協力

昭和四十四年
11月1日 芦ノ湖西側外輪山稜より西側に幅一〇〇〇メートルの鳥獣保護区が設置される

昭和四十五年
6月    芦ノ湖早川の汚染問題指摘、下水道の必要提案
11月1日  自然保護思想普及について箱根町より事業委託を受ける

昭和四十六年
3月10日  芦ノ湖西岸植林地伐採及び林道計画について林野庁へ陳情
11月20日  全国自然保護連合第一回総会を小田原市立城山中学校を会場に開催
11月21日  全国自然保護のつどいを箱根観光会館で開催、大石環境庁長官臨席

昭和四十七年
8月     奥湯河原大観山付近の開発計画についてハコネサンショウウオへの影響調査

昭和四十八年
1月1日   箱根で保護したい景観、地域、文化財、動植物等についてアンケートによる調査
2月     アンケートにあげられた物件についての実地調査開始
2月6日   湖尻付近(禅月山)の景観保護について環境庁、県へ要望
10月    マンション規制方意見発表
12月    久野林道老人ホーム計画に反対意見発表

昭和四十九年
10月30日  箱根町都市計画及び下水道計画についての研究会
12月17日  箱根町の観光行政についての研究会

昭和五十年
3月8日   自然環境保全審議会の答申案に対する本会の要望を行政管理庁調査官に現地で説明
6月7日   特別保護地域について要望書を環境庁、林野庁、県及び町に提出
7月20日  クリーン箱根作戦に参加
9月27日  湿原植物群落の現状と保護対策検討会
11月26日  公共下水道計画について研究会
12月21日  水力発電所の取水量について規制方を県及び町へ陳述

昭和五十一年
4月21日  箱根ファミリーガーデン計画について県自然保護課へ要望書を提出
6月29日  ハコネコメツツジ等の盗採の実態検討
7月     大観山のハコネサンショウウオを湯河原の自然保護団体と共同調査
11月3日  「いつまでも美しく豊かな箱根のために」のポスター配布

昭和五十二年
1月10日  小塚山湘南ホスピタル計画について反対の意見提出
2月12日  東電発電所の観光放流について検討
5月7日   ハコネコメツツジの盗採防止のため理事有志パトロール強化

昭和五十三年
1月1日  電々公社鞍掛山アンテナ工事について高さを下げるよう設計変更を要請
9月9日  駒ヶ岳山頂レストハウスの撤去方要望
12月16日 鞍掛山アンテナ取付道路計画に対し山頂部にまで大幅の道路を作らないよう要望

昭和五十四年
5月16日  野猿調査に協力
5月20日  小田原ナーゲル会金時山清掃登山協賛

昭和五十五年
5月~   箱根地区のホタル生息環境調査に協力

昭和五十六年
6月8日  地域の環境保全に顕著な業績ありとして環境庁より表彰される。
7月3日  仙石原のケハンノキ群落の保護について要望書提出
8月    オシドリの繁殖確認調査

昭和五十七年
1月16日  オシドリの巣箱掛作業に協力
8月10日  芦ノ湖西岸林道計画について平塚営林署長に要望書提出
11月27日 恩賜公園周遊道路開削計画の変更方について要望書提出
11月22日 畑引山開発計画について県管理事務所の説明を聞く。

昭和五十八年
2月28日  温泉の水位・温度・泉質の低下について会報を通じ広報と警告、地下水の無制
      限汲み上げの問題点を指摘、行政の対応を要望
11月16日 小涌園子供の村再開発計画環境影響評価書案に対し意見書を提出

昭和五十九年
2月20日  同見解書に対し再意見書を提出
3月31日  会報第二七号発行

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※本文書は昭和61年発行の『箱根温泉史』記載事項です。現在の事実とは異なる部分があります。

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