【湯本温泉】

 箱根火山の東の玄関口に位置し、交通の便が大変良い。標高一〇〇メートル。小田原から箱根登山電車またはバスで一五分。東京副都心の新宿から小田急線ロマンスカーで九〇分。湯本駅前から旅館への無料送迎バスサービスがゆき届いている。
 温泉地の歴史は古く奈良時代の天平年間に釈浄定坊が発見したと伝えられている。箱根七湯の一つ。早川と須雲川の合流点付近から湯坂山に沿って流れる須雲川ぞいに温泉街が発展した。温泉は谷底の早川凝灰角礫岩、その下部の湯ヶ島層群の亀裂から湧出している。町内湯場の熊野神社の裏手に、早川凝灰角礫岩の露頭に掘られた横穴湧泉の坑口がある。
 泉質は高温のものはナトリウム―塩化物泉。温度の低いものほど硫酸カルシウム又は硫酸ナトリウムの比率が増す。上記泉質系列の単純温泉が最も多い。温度二三~七八℃。液性は中性~弱アルカリ性で入浴後さわやか。総湧出量四六四三ℓ/分。
 三枚橋から旧道沿いに古寺が点在する。北条早雲の菩堤所早雲寺は二代氏綱が建立、本堂裏の枯山水庭園は氏綱の弟幻庵の作という。境内に連歌師宗祇(そうぎ)の句碑がある。箱根町天然記念物ヒメハルゼミの生息地。鎌倉時代の初めと創建を伝える正眼(しょうげん)寺には曽我兄弟の木像などがある。鎖雲寺には浄瑠璃で知られる躄(いざり)勝五郎と初花の墓がある。白石地蔵は湯本駅の山側、凝灰岩に刻まれた磨崖仏で鎌倉時代後期の作と伝えられている。滝通りを歩くと玉簾(たまだれ)の滝に到る。
 箱根町立郷土資料館、小田急箱根アスレチックガーデン、小田原湯本カントリークラブなどがあり、年中行事としては、湯本温泉夏祭(七月下旬)、箱根大名行列(十一月三日)がある。旅館・ホテル五七軒。

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※本文書は昭和61年発行の『箱根温泉史』記載事項です。現在の事実とは異なる部分があります。

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