【箱根分院での温泉治療法】

 ここでは、傷病に効果のある温泉療法が研究されていた。入浴療法は古来医学界から認められていたが、箱根分院では「温泉泥」の患部塗布が治療効果をあげていた。このため大涌谷から温泉泥を木箱に詰めて箱根登山電車で強羅から湯本駅まで運搬し、分院本部(三昧荘)の特別室に搬入したが、温泉泥は独特のにおいを発散するため、一般乗客や会社からの苦情があったという。温泉泥による治療法は、患部塗布または泥浴で、骨折、打撲、リュウマチ等に効果があった。

 なお、温泉旅館はどのような経緯で陸軍病院の分院に指定されていったのか、旅館が指定を受ける際にどのような条件の下で承諾したのであろうか。陸軍病院は箱根の分院を指定する際、当面の関係者として、旅館組合と折衝した。当時軍と旅館組合の中間に立って交渉の任に当たった元軍人(元陸軍主計大尉八木沢忠義)の話によると、旅館の施設等が適当規模であることが契約条件の四〇パーセント、旅館側の希望が六〇パーセントであったという。また旅館全体の建物から家族の居住する区域を除いた面積及び什器が賃貸契約の対象となった。更に軍は賃貸契約の解除に当たっては、建物はもちろん、什器類に至るまで破損その他の被害に対し全額補償の契約をしていた。旅館との賃貸契約は、東部軍管区経理部がその任に当たり、軍病院は当面の契約者ではなかった。

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※本文書は昭和61年発行の『箱根温泉史』記載事項です。現在の事実とは異なる部分があります。

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