【箱根温泉宿組合の結成】

 明治二十九年(一八九六)に設立された「箱根温泉宿組合」については、第二章第八節に詳述してあるので、本稿においては、その時に作成された「箱根温泉宿組合規約」及び、組合設立に関係の深い「明治二十二年県令第二十四号・宿屋営業取締規則」を資料として紹介しその間の事情を推察する参考に供したい。

    箱根温泉宿組合規約
       第一章 組織及目的
 第一条  組合ハ明治二十二年県令第二十四号ニ基キ箱根地方ニ於ケル温泉宿営業者ヲ以テ組織ス
 第二条  本組合員ハ互ニ権謀的競争ノ弊ヲ避ケ親睦ヲ旨トシ該業ノ発達ヲ謀リ福利ヲ増進スルヲ以テ
      目的トス
       第二章 名称及区域
 第三条  本組合ハ箱根温泉宿組合ト称シ事務所ヲ温泉村ニ置ク
 第四条  本組合ノ区域左ノ如シ
      足柄下郡湯本村 温泉村 宮城野村 仙石原村 芦ノ湯村 元箱根村
       第三章 組合員
 第五条  本組合員ハ本規約並ニ組合会議ニ於テ定メタル規程ヲ確守シ且ツ其費用ヲ分担スルノ義務ア
      ルモノトス組合会議ニ欠席シタルノ故ヲ以テ前項の義務ヲ免ルヽコトヲ得ズ
 第六条  本組合員ハ本業ヲ廃スルカ若シクハ区域外ニ転住スルニ非ザレハ本組合ヲ脱スルコトヲ得ズ
 第七条  新規組合ニ入ラントスルモノ若シクハ組合員ニシテ組合区域外ニ転住又ハ廃業セントスル者
      ハ速カニ事務所ニ届出ヘシ
      但シ其筋ニ差出書類ニハ行事の調印ヲ受クヘシ
       第四章 役員及選挙法
 第八条  本組合ニ左ノ役員ヲ置キ書記ヲ除クノ外総テ名誉職トス
      正副行事一名宛 委員四名 書記一名
 第九条  正副行事ハ組合員ノ互選トシ任期ハ満二ヶ年トス
 第十条  委員ハ組合員ノ互選トシ連記無記名投票ヲ以テ左ノ如ク選出シ其任期ハ満一ヶ年トス
      第一区 湯本村在住者ノ内 一名 第二区 温泉村、宮城野村、仙石原村、元箱根村姥子在
      住者ノ内 二名
      第三区 芦ノ湯村元箱根村湯ノ花沢在住者ノ内 一名
 第十一条  行事ハ本組合ヲ代表シ左ノ事項ヲ処理スヘシ
     一 本組合全体ノ取締及組合事務所ニ必要ナル規定
     ニ 組合員ノ本業ニ関シ創廃ノ願書等ニ調印スルコト
     三 組合中ニ生シタル紛争及違約者処分執行ニ関スルコト
     四 組合会議ニ関スル一切ノ庶務
     五 本規約及組合総会所決ノ事項ニ由リテ生シタル一切ノ事務
     六 経費ノ賦課微収出納計算及組合総会ニ決算報告ヲナスコト
 第十二条  副行事ハ正行事ノ事務ヲ補佐シ正行事故障アルトキハ之カ代理ヲ為スベシ
 第十三条  委員ハ行事ノ指揮ヲ受ケ各区ニ於ケル事務ヲ処理ス
 第十四条  委員ハ組合総会閉会期間ニ於テ起リタル重要事件ニ付行事ノ招キニ応シ協議決定スベシ
       第五章 会議
 第十五条  組合会議ヲ分テ三種トス
     一 通常総会 ニ 委員会 三 臨時総会
 第十六条  組合総会ハ毎年一月総員三分ノ一以上出席シテ之レヲ開ク其期日ハ行事之ヲ定ム
       左ノ原由アルニアラザレバ臨時総会ヲ開クコトヲ得ス
     一 委員会ニ於テ必要ト認メタルトキ
     ニ 組合員七名以上ノ同意ヲ以テ請求シタルトキ
 第十七条  臨時総会ハ組合総員半数以上ノ出席者アルニ非ザレハ開会スルコトヲ得ス総テ会議ハ出
       席者ノ過半数ニ依テ決ス可否同数ナル時ハ行事之ヲ決ス
 第十八条  組合総会ニ於テ議決スヘキ事項左ノ如シ
     一 組合規約ノ更正加除ニ関スルコト
     ニ 営業ニ於ケル供給物品及席料等ノ価格ヲ定ムルコト
     三 営業上ノ弊害を矯正スルコト
     四 違約者処分ニ関スルコト
     五 経費ノ予算制定
     六 業務上必要ナル規程ヲ定ムルコト
 第十九条  委員会ハ正副行事及委員ヲ以テ成立シ一月、三月、六月、十一月之ヲ開ク但行事ニ於テ
       必要ト認ムルトキハ随時之レヲ開会スルコトヲ得
 第二十条  本組合ノ利害ニ関シテ緊急ノ要件生シタル時ハ組合総会開会ニ至ル迄委員会ノ所決ヲ以
       テ処理ス
       但委員会ニ於テ本規約ノ条項ヲ変更増除スルコトヲ得ス
 第二十一条 組合総会ニ於テ前条委員会ノ所決ヲ承認シタル時ハ尚ホ将来ニ向テ其効力ヲ失ハス
       第六章 違約処分
 第二十二条 本規約第五条ニ違背シタルモノハ金三円以上五十円以下ノ違約金ヲ徴収シ又ハ営業上ノ
       取引ヲ拒絶スルコトアルヘシ其期間ハ会議ノ評決ニ依ル
 第二十三条 違約者ハ行事ヨリ違約金ノ請求ヲ受ケタル日ヨリ五日以内ニ之ヲ完納スヘシ若シ異議ア
       ルトキハ組合総会ニ事実ヲ提供シ其裁決ヲ受クヘシ
 第二十四条 違約金ヲ徴収セントキハ行事之レヲ保管スヘシ支出ノ法ハ組合会議ノ評決ニ依ル

    箱根温泉宿組合規程(明治三十九年一月)
  組合規約第十八条ノ供給物品ノ価格及ヒ席料其他業務上必要ノ事項左ノ通議決ス
 第一  本組合ノ会議ニ於テ決議シタル事柄ハ行事ヨリ組合全体ヘ即報スヘシ
 第二  行事ハ委員会ヲ開カントスルトキハ会場日時ヲ組合員ニ通知シ各自其最寄委員ニ託シ建議ス
     ルノ便ヲ得セシムヘシ
 第三  組合員中ニ異変ノ起リタルトキハ其最寄委員ハ行事ヘ報告スヘシ行事此報告ヲ受ケタルトキ
     ハ組合員ニ即報シ且臨機ノ処置ヲナスヘシ
 第四  本組合員ニシテ明治二十二年神奈川県令第二十四号第十三条ノ処分ヲ受クルモ組合規約ノ処
     分ヲ免カルヽコトナシ
 第五  本組合ノ役員ニシテ辞職セントスルトキハ会議ノ承諾ヲ受クヘシ
 第六  役員故意ニ職務ヲ怠リ又ハ正当ノ事由ナクシテ会議ニ欠席シタルトキハ規約第二十二条ニ依
     リ処分スヘシ
 第七  本組合員違約ノ為同業者ニ損害ヲ与ヘタルトキハ賠償セシムルモノトス但シ其金額ハ会議ノ
     認定ヲ受クルヲ要ス
 第八  組合員ノ家族ハ勿論雇人ト雖モ本規約及規程ニ違背シタルトキハ其責ハ宿主ニ帰スルモノト
     ス
 第九  本組合規約規程ニ違犯シタルモノアルコトヲ密告シ誠実ニ証拠立ヲナシタルモノヘハ違約者
     ヨリ徴収シタル違約金ノ半額ヲ与フヘシ但同業者ハ此限ニ非ス
 第十  違約者処分ニ付行事ハ弁護士ヲ以テ職ノ代理ヲナサシムルコトヲ得其費用ハ予算ヲ定メ総会
     ノ承諾ヲ得ヘシ
 第十一 不都合ノ行為アリ解雇シタル雇人ノ氏名ハ組合事務所ヘ届出ツヘシ事務所ハ其氏名ヲ各組合
     員ニ通知スルモノトス
     但本項ノ通知ヲ受ケタルモノヲ雇ヒ入ルヽコトヲ得ズ三ヶ年ヲ経過シタルモノハ此限ニ非ス
 第十二 車夫及人足ハ各自出入ノ温泉宿ニ於テ取締ヲナスヘシ若シ右等人夫不都合ノ行為アルトキハ
     其出入ヲ禁シ組合行事ヘ屈出ツヘシ組合行事此届出ヲ正当ト認ムルトキハ組合全体ヘ使用セ
     サル様通知スヘシ
 第十三 区域内ノ駕籠賃人力車賃等ハ不権衡ナキ様会議ニ於テ評決シ行事ヨリ人夫取締ニ商議決定ス
     ヘシ組合員ハ相対上此決定ヲ変更スルコトヲ得ス
 第十四 宿引ヲ差出シ又ハ途中ニ於テ旅客ノ通行ヲ見掛ケ強テ屋内ニ入ルヽノ所業ヲナスヘカラス
 第十五 車夫駕籠人足休茶屋等へ金錢物品ヲ給与シ自家ニ旅客ヲ招引スルノ策ヲナスヘカラス
     但シ已ムヲ得サル事情ヲ以テ之ヲ給与セントスル時ハ事由ヲ具シ行事ノ認許ヲ請フヘシ行事
     之ヲ許サントスルトキハ役員半数以上ノ同意ヲ得組合員ヘ即報スヘシ
 第十六 行事ハ見込ヲ以テ毎年五月ヨリ九月マテノ間ニ於テ請願巡査ノ派遣ヲ乞ヒ車夫人足等ノ取締
     ヲナサシムルコトヲ得
 第十七 夜間ハ十一時限リ歌舞音曲等安眠ヲ妨害スヘキ行為ナキ様且ツ昼夜ヲ問ハス室外ヘ裸体ニテ
     出テサル様浴客ヘノ注意書及ヒ物価表其他会議ニ於テ議決シタル事項中掲示ヲ必要ト認メ配
     布シタルモノハ衆人ノ見易キ場所ヘ掲クルモノトス
 第十八 物価席料及入浴料等ハ左ノ範囲ニ依ルモノトス但軍人行軍ノ節学校生徒運動会等ノ場合ニ於
     テ此範囲外ニテ宿泊セシメントスルトキハ其都度行事ニ届出ツルモノトス
    一 宿泊料
       特等 金二円五十銭以上 一等 金二円以上 二等 金一円二十銭以上
       三等 金八十五銭以上  等外 金五十銭以上
    一 昼食料
       特等 金一円以上   一等 金七十五銭以上 二等金五十銭以上
       三等 金三十五銭以上 等外 金二十五銭以上
    一 学校生徒多数ニ来リタルトキノ賄料ハ一日金四十銭ヨリ金五十五銭迄
       食物ノ標準ハ夕飯魚及豆腐つゆノ類 朝飯汁及煮豆ノ類 昼ノ弁当ハ握飯ヘ煮しめノ類
       ヲ添ヘ竹ノ皮包トスル事
       但シ先方ノ求メナキトキハ茶菓子及ヒ浴衣ヲ差出サヽル事
    一 料理
       一品ニ付 金十銭以上
       但汁、煮豆、豆腐類ニ限リ本項ニ依ラサルコトヲ得
    一 入浴料
       普通一人一日ニ付金五銭以上十銭迄 別室貸切 金五十銭以上ニ円迄
    一 席料
       席ノ構造及大小ニ依ル
    一 夜具料
       木綿更紗ノ類一組二付金十銭以上二十銭迄 絹布一組ニ付金三十銭以上(但一日分)
    一 飲料
       内国製ビール 大、金三十銭ヨリ金三十五銭マデ、小、金十八銭ヨリ金二十銭マデ
       鉱泉類    大、金三十銭ヨリ金四十銭マデ、小、金十五銭ヨリ金二十銭マデ
       日本酒    凡二合入一本 金十八銭以上(但瓶詰酒ハ此限ニアラス)
       牛乳     一合 金六銭
       ラムネ    並製一本 金六銭ヨリ 特製一本 金十五銭ヨリ
    一 近郷農家浴客ニシテ一室ニ数人同宿スルモノニ限リ左ノ規定ニ依ルコトヲ得
       温泉料、席料、炭油料、焚出料共一日一人金十五銭ヨリ二十銭迄
       夜具一組金四銭以上 蒲団壹枚ニ付金二銭以上
       食物一品ニ付金二銭以上
       駿東郡地方ノ浴客ニ対シテハ玄米一升以上ヲ以テ温泉料、席料、炭油料、焚出料(已上
       一日分)二代用スルコトヲ得
       但駿東郡ノ外ハ米ヲ代用セシムルコトヲ得ス
       夜具料一組ニ付金四銭以上蒲団一枚ニ銭以上
 第十九 本組合員営業上ノ広告ヲナサントスルトキハ予メ草稿ヲ行事届出承諾ヲ受クヘシ
 第二十 本規程ニ違背スルモノハ組合規約第二十二条ニ依リ処分スルモノナリ

    宿屋営業取締規則(明治二十二年県令第二十四号)
       第一章 通則
 第一条 宿屋ヲ分テ旅人宿、下宿屋、木賃宿ノ三種トス
 第二条 宿屋営業ヲナサントスル者ハ其場所種類ヲ記シ営業用ニ供スル建物坪数及ヒ間取ヲ記シタル図
     面ヲ添ヘ所轄警察署又ハ分署ヘ願出免許ヲ受クヘシ
     其場所種類又ハ間取坪数ヲ変更増減セントスル時モ予メ図面ヲ以テ届出認可ヲ受ケ落成ノ上ハ
     更ニ届出検査ヲ受クヘシ
 第三条 左ニ列挙シタル者ハ営業者タルコトヲ得ス
   一 未丁年者白痴癇癪者ニシテ後見人ナキ者
   ニ 盗罪及詐欺取財ノ罪ヲ犯シ又ハ現ニ監視中ノ者
   三 風俗ヲ乱ルヘキ所為アリタル者
 第四条 宿屋営業者ハ免許ヲ受ケタル後ト雖トモ客室坪数若クハ構造此規則ノ制限ニ適セサル間ハ其業
     ヲ営ムコトヲ得ス
     但建替修繕等ノ為ノ一時制限ニ適セサル場合ハ此限ニアラス
 第五条 代換リ改名又ハ廃業シタル時ハ七日以内ニ其旨所轄警察署又ハ分署ヘ届出ヘシ其後後見人ノ変
     換改氏名ニ於ケルモ亦同シ
 第六条 宿屋営業者ハ其種類ヲ記シタル看板ヲ店頭ニ掲ケ旅人宿ハ夜中営業時間ハ標燈ヲ以テ之レニ代
     フヘシ
 第七条 宿屋営業者ハ雇人受宿ヲ兼業スルコトヲ得ス又一戸内ニ於テ貸座敷ヲ兼業スルコトヲ得ス
 第八条 宿屋営業者ハ警察署分署管轄区域ニ従ヒ組合ヲ設ケ其営業者中ヨリ公撰ヲ以テ行事副行事各一
     名ヲ撰挙シ警察署又ハ分署ノ認可ヲ受クヘシ
     但シ組合ハ時宣ニ依リ分合セシムルコトアルヘシ
 第九条 行事ハ官署ノ命令ヲ同業者ニ伝達シ同業者ノ願届ニ加印スヘシ
 第十条 組合ニ関スル費用ハ其組合営業者ノ負担トス
 第十一条 組合費用収支ノ方法及ヒ行事ノ進退任期等ハ組合規約ヲ以テ之ヲ定ムヘシ組合規約ハ所轄警
      察署又ハ分署ヘ届出認可ヲ受クヘシ其増減変更シタル時モ亦同シ
 第十二条 宿泊料其他宿泊人ニ関スル緊要ノ事項ハ帳場其他見易キ場所ニ掲示スヘシ
 第十三条 何等ノ名義ヲ以テスルモ家外ニ於テ客ヲ誘引スルコトヲ得ス
 第十四条 宿泊人ノ承諾ナクシテ他人ヲシテ濫リニ室内ニ入ラシムルヘカラス
 第十五条 宿泊人疾病ニ罹ル時ハ医薬看護等其求メニ応シ特ニ懇切ニ取扱フヘシ
 第十六条 宿泊料ノ代償トシテ警察官ノ允許ヲ得ス私ニ宿泊人ノ所持品ヲ差押ヘ又ハ受領スヘカラス
 第十七条 宿泊人ニ遊興ヲ勧メ又ハ濫リニ客ノ求メナキ飲食物ヲ供スヘカラス
 第十八条 宿泊人変死傷ニ罹ルカ又ハ其所有品紛失シタルトキハ即時警察官又ハ巡査ニ申出ヘシ
      但宿泊人中ニ不審アリト思量シタル時ハ其外出ヲ止メ置クヘシ
 第十九条 宿泊人ノ内怪ムヘキ挙動アル者アリタル時ハ即刻警察官又ハ巡査ニ報告スヘシ
       第二章 旅人宿
 第二十条  旅人宿ハ横浜市内鎌倉郡川口村ノ内江ノ島足柄下郡箱根七湯(湯本 塔之沢 底倉 木賀
       宮之下 堂ヶ島 芦ノ湯)ニ於テハ客室二十坪以上其他ハ客室十二坪以上ヲ有スル家屋ニ
       アラサレバ営業スルヲ許サス
       但僻村ニ於テ此制限ニ拘ハラズ許可スルコトアルヘシ
 第二十一条 客室ハ充分ニ光線ヲ取リ且空気ノ流通宜キ様構造スヘシ
 第二十二条 客室ニハ堅固ナル錠前付ノ押入又ハ戸棚ヲ設クヘシ
       但成ルヘク其鍵ヲ異ニスヘシ
 第二十三条 二階以上ノ客室二十坪以上アルモノハ階子二ヶ所以上ヲ設クヘシ其幅ハ四尺ヲ下ルベカラ
       ス
       明治三十七年四月県令第二十七号ヲ以テ本条(第二十三条)ヘ左ノ三項ヲ加フ
     一 建造物五拾坪毎(二階以上ハ各別トス)ニ一個台所浴場等ニハ一ヶ所毎ニ一個ノ消火器ヲ
       設備シ其設置場所ハ所轄警察署ノ指定ヲ受クヘシ
     ニ 燈火ノ油壺ハ金属製ノモノヲ使用スヘシ
     三 前ニ項ハ土地ノ状況ニ依リ所轄警察署ノ許可ヲ経テ之レニ拠ラザルコトヲ得
 第二十四条 便所ハ臭気ノ客室ニ及バザル所ニ設ケ糞尿ヲ受容スヘキ部分ハ石敲キ陶器等ヲ以テ構造シ
       且小便所ハ一口毎ニ区画ヲ為スヘシ
       但便所構造規則施行ノ場所ハ尚ホ其規則ニ従フヘシ
 第二十五条 便所ハ日々清潔ニ掃除スヘシ
 第二十六条 客室ハ一坪ニ付旅客一人ノ割合ヲ超過スベカラズ其承諾アル場合及ヒ同行者ハ此限ニアラ
       ス
 第二十七条 同行者ニアラザル男女ヲ同室ニ宿泊セシムベカラス
 第二十八条 正当ノ事故ナクシテ旅人ノ宿泊ヲ拒ムベカラス
 第二十九条 旅人宿営業者ハ別ニ定メタル様式ニ従ヒ宿泊人名簿ヲ調製シ警察署又ハ分署ノ検印ヲ受ケ
       宿泊人アリタルトキハ之カ記入ヲナシ警察署又ハ分署巡査駐在所々在地及ヒ横浜市内ニ在
       リテハ管区巡査派出所ヘ遅クモ六時間ニ届出検査ヲ受クベシ其他ノ場所ニ於テハ警察官吏
       巡回ノ際検閲ヲ受クヘシ其帳簿ハ五ヶ年間之レヲ保存スヘシ
   第三章 下宿屋
 第三十条  下宿屋営業者ハ下宿人投宿後二十四時間以内ニ其下宿人ト連署ノ上下宿人族籍住所氏名年
       齢下宿ノ事由ヲ記シタル届書ヲ所轄警察署又ハ分署巡査駐在所ニ差出スヘシ
 第三十一条 第二十二条第二十三条第二十四条第二十五条ハ下宿屋ニ於テモ亦之ヲ適用ス
 第三十二条 下宿人ハ客室三坪ニ付四人ノ割合ヲ超ルコトヲ得ズ
 第三十三条 下宿人ノ本籍氏名ヲ記シタル木札ヲ店頭又ハ門戸ニ掲出スヘシ
 第三十四条 下宿人転宿シ又ハ五日以上外泊シテ所在不分名ナル時ハ二十四時間以内ニ其旨ヲ所轄警察
       署又ハ分署巡査駐在所ヘ届出ヘシ
   第四章 木賃宿
 第三十五条 木賃宿ハ特ニ指定シタル場所ニ於テハ営業スルヲ許サズ
 第三十六条 宿泊人滞在中外泊シタル者アルトキハ其旨ヲ帳簿ニ記載シ置クヘシ
 第三十七条 宿泊人名簿ニ関スル規則ハ第二十九条ノ例ニ従フヘシ
   第五章 罰則
 第三十八条 此規則第二条第四条第五条第十三条第十四条第十五条第十六条第十七条第十八条第十九条
       第二十六条第二十七条第二十八条第二十九条第三十条第三十二条第三十四条第三十六条ニ
       違背シタル者及ヒ第六条第十二条第二十五条第三十三条ニ違背シテ官ノ督促ニ従ハサル者
       ハ一日以上三日以下ノ拘留ニ処シ又ハ五銭以上一円二十五銭以下ノ科料ニ処ス
       附則 省略
 明治三十七年四月
  小田原警察署又ハ宿屋営業取締規則方第二十三条ノ消火器ヲ六升器以上ト指定ス
   但シ温泉場ノ浴室ハ同条ニ拠ラザルコトヲ許可セラレタリ

  宿屋営業規則第八条及び宿組合規約第六条の定めにより七湯の湯宿はすべて組合に加盟することを義
 務づけられたのである。また規程には細目にわたる料金の他に自粛要項や罰則を定めて天保十四年の規
 約を引き継いでいる。
  明治二十九年に結成された同組合は、初代行事宮之下奈良屋安藤兵治宅に事務所をおいて、活動を始
 めるのであるが、初期の活動は、組合員の親睦及び誘客宣伝に意が注がれた。
  明治三十七年(一九〇四)一月の総会において安藤兵治は組合の行事を辞任し、二代行事には小涌谷
 の榎本恭三が選任(明治三十七年一月~大正七年四月)され、三代行事には川辺儀三郎(大正七年四月
 ~大正十五年二月)が在職した。

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※本文書は昭和61年発行の『箱根温泉史』記載事項です。現在の事実とは異なる部分があります。

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