満州事変から日中戦争へと、中国大陸に戦火が拡大し、やがて太平洋戦争へ広がり、ついに第二次世界大戦と戦禍は拡大していった。
なかでも、太平洋戦争となった昭和十六年から二十年八月の終戦に至るまでの過程は、旅館経営者にとって苦難といばらの道であった。大半の旅館経営者の男子は兵隊に召集され戦場へ赴いた。残された旅館の主は女主人に代わり、ますます窮迫する食糧品の欠乏に加え、あらゆる生活用品の統制に耐えながら、伝統の箱根温泉旅館を守った。
当時、旅館の女将として、戦時下の箱根温泉旅館を守ってきたいく人かのひとからお話を聞いた。