シャープ勧告によリ所得税の最高税率は八五パーセントから五五パーセントに引下げられたが、高額所得者に対する税負担の適正化を図るため、昭和二十五年五月富裕税が新たに設けられた。一種の恒久的な財産税で、毎年十二月三十一日時点の財産の総額から負債の総額を差引いた金額が五〇〇万円を越える者に千分の五から千分の三〇までの超過累進税率によって税が課せられた。
この時の不動産の評価倍数は昭和二十一年の財産税時に比べて一二~二〇倍にはね上がり、僅か四年間で生じたインフレーションのすさまじさに驚かされる。また、この頃になると、節税のため同族法人に変える旅館が増えたが、これらの旅館主は自社の株式の評価計算に苦労した。富裕税は昭和二十五年分から二十七年分まで三年間にわたって実施されたが、税制の簡素化を図るため昭和二十八年に廃止となった。